〈第5回〉 街で頑張る人間の大切なパートナー.
日向のアスファルト | 車の陰のアスファルト | 樹木の木陰のアスファルト |
この街路樹たちは、とても厳しい環境の中で生きています。夏の少雨、高温、そして限られた植桝。根が行き場を失い生育障害を起こし、果ては歩道のアスファルトをもちあげたり……。しかし、最高に厳しいのは人間さまの要求ではないでしょうか。「枯れ葉が落ちて掃除が大変」「花や実も落ちて道路が汚くなる」「鳥がやってきて樹にとまって糞をする」などなど。挙句の果てに剪定(せんてい)する費用がないから、数年に1度の強剪定で丸坊主。強剪定した切り口に防腐剤の塗布をしないため腐朽菌が入り、枯れる原因になったり。街路樹にとっての最大の敵は人間ではないかと思ってしまいます。
そもそも街路樹の役割とは何なのでしょうか?
阪神淡路大震災の時に街路樹が延焼を防いだ話をご存じの方は多いのではないでしょうか。
また、二酸化炭素を吸収するのは樹です。さらに、あまり知られていないのが、樹が水分を葉や枝から蒸散させており、この「蒸散作用」によって樹の下が涼しくなっているということです。人工的な遮蔽物の陰と、木陰では涼しさが全く違うのです。
実際に平成23年7月10日午後4時、鳥取市南隈の商業施設の駐車場で温度を測ってみました。
駐車場の日向のアスファルト 53・9℃
車の陰のアスファルト 43・7℃
植木の下、いわゆる木陰 31・5℃
なんと、その差22・4℃です。
街路樹の全くない街が、どんな有り様になるのか想像してみてください。夏の太陽に照らされたアスファルトは60度以上にもなります。さらに車がもたらす排気熱と排気ガス……。到底人間が歩ける環境ではありません。
樹がもつ温度調節機能を人工的に作り出すことは可能でしょうが、そのためには莫大なエネルギーを必要とし、大量の二酸化炭素の排出を伴うことでしょう。
街路樹には効果もありますが、前述のように弊害も存在するのは確かです。でも、その弊害も考え方ひとつで効果に変えることもできます。落ち葉にしても、集めて公園などで堆肥化すれば立派な腐葉土になります。
日本植木協会では、次代を作る子どもたちに地球や環境を考えるこのような知識を身につけてもらい、美しい地球、日本を作っていってもらいたい……という思いから、「緑育出前授業」と題し、全国の小中高等の学校で、地域の植木屋さんが講師となり授業を行っています。また、5月22日午前10時に世界各地で植樹して緑の波で地球を包もうとする、国連生物多様性条約事務局先導キャンペーン「グリーンウエイブ」への協力団体として、希望する学校に植木を提供する事業も行っています。
街の植木たちは、単なる生産物から、生きる仲間として成長を続けています。この仲間は人間にとって大切なパートナーなのです。
(有)辰巳園〈鳥取県〉 加藤一巳
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