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ホーム » 植木協会の取組み » 植生アドバイザー育成セミナ−(環境省登録人材認定等事業 » 植生アドバイザー育成講座のご紹介
一般社団 人日本植木協会
東京農業大学総合研究所研究会
みどりの環境創造研究部会

人と自然の共生のために、いま必要なこと

 生物界の一員である人間は、他の生物が生きていけない状態で、人間だけが生き延びることはあり得ません。人間が持続的な生活を可能とするには、自然生態系の物質循環を支える一員となることです。自然の産み出すバイオマスの利用は食料やエネルギー、生物多様性の保全、水質浄化、大気浄化などの環境調整機能を高めることに繋がります。人と自然の共生を具現化したかつての里山は自然の許容範囲の中で、持続的な暮らしを可能としました。断ち切れてしまった今の暮らしを元に戻すには、植生を利用した「みどりの環境創造」が必要です。それを今風にまとめれば、SDGs、nature positive、green infra.のすべてに対応しているのです。
 私たちは、環境に適した「みどり」を再生することのできる人材を輩出しています。それは、植物についての正しい知識を持ち、植生を調査して得られるデータを利用して植生景観のまとまりから土地診断、緑化計画、緑の保全・再生整備計画などを立案できる人材です。
 持続可能な「みどり」を再生する計画には、基礎的知識と具体的なデータが不可欠です。それらが無いままに計画を実行すると、その土地の環境や気候に適合せず、生態系の十分機能しない「みどり」となってしまう可能性があります。また、持続的な生態系の安定に必要な生物多様性の基盤すら整わないかもしれません。 

植生を調べてわかること

 「植生」とは、いわば山や野原を覆っている「緑の衣服」です。この緑の衣服はたくさんの植物で構成され、その場所の環境に合った植物の組み合わせ (植物群落)になっています。ひとつひとつの群落について、その違いや構成種を調べることで、どのような環境下に成立しているのか、人の影響下で成立した植生なのか、本来の植生は何なのか、その場所の環境条件や人間の影響の強さなどを判断できます。
 そして人と自然の共生系である里山は、植生景観という均一な空間の広がりであり、自然環境と土地利用を指標する植物群落の組み合わせで成り立っています。
 植生景観の修復のための植生復元計画は、植物の同定ができ、植物群落を抽出し、更に植生景観を判定するスキルが必要です。そのスキルを座学と実践で学ぶ講座が「植生アドバイザー育成講座」です。

自然環境、再生について、深く知りたいあなたに!

※あなたの周りには、いろいろな植生の広がりとそこに生育する植物たちがいる
植生や自然環境を深く学びたいあなたには、この2つをマスターしてほしい!

1 植生について実践的に学べる講座
 「植生アドバイザー養成講座」
  ※全コース履修で「植生管理士認定試験」の実技試験が免除

2 植生のプロの技術者を認定する資格
  「植生管理士認定試験」


いずれも、植生の分野で権威の東京農業大学名誉教授中村幸人先生監修のプログラムです。
その優れた内容か認められ、環境省・農林水産省の「人材認定等事業」に登録されています。

「植生アドハイザー育成講座」について

 目の前にある自然環境を正確に理解して、適切な植生復元の計画を策定・指導できる人材を育成するために、「植生アドバイザー成講座」を平成15年より毎年実施し、受講者を広く一般から募集しています。
 この講座では、森や草原など様々な植生の成り立ちについて座学による理論的な学習と、実際に野山に入って行う植生調査実習を行います。植生復元や自然再生を確実に行う人材を輩出するためには草原や森を構成する種の特性を正しく理解し、そこに人の手が加わると植生はどのように変化するのか、人と自然の共生系である里山はどのような植生で成り立っているのか、バランスの崩れた場所ではどのように植生を修復していくのか、グリーンインフラを踏まえた体系的なカリキュラムが組まれています。
 カリキュラムはAコースからCコースの3つで構成され、ビデオ講座と各コース2泊3日の実地研修プログラムを一年ごと受講して頂くことで、段階的に知識と技術を習得できるように編成されています。開催場所は群馬県利根郡川場村で毎年8月下旬に行われています。標高500m以上の田園と山地という土地利用の中、豊富なフィールドで人と自然の共生について様々な環境と植生の成り立ちを学んでいきます。
 この講座は、その優れた点か認められ、平成22年度に、環境省・農林水産省の「人材認定等事業」に登録されています(詳しくは環境省HPにて)。また当講座は、造園CPDと全国土木施工管理技士連合会 CPDSにも登録しており、多くの単位が取得できる点も、業務に役立てることができます。
 講座では、国内の第一線で活躍されている講師の方々に、その専門ごとの講義をしていただく、密度の濃い内容となっています。
 また、A〜Cのすべてのコースを履修すると、「植生管理士認定試験」の実技試験が免除になります。講座の詳細は、(ー社)日本植木協会のホームページをご覧下さい。
講座の内容
Aコース
植生調査基礎コース

講師:
(公財)IGES国際生態学センター
鈴木伸一先生
植生学の基礎・日本の植生
植生調査基礎コース
※日本の植生を識るために植生調査の方法と意義を学び、実際に野外での植生調査技術と知識の習得を目指します。

Bコース
植生景観基礎コース

講師:
東京農業大学 中村幸人先生
植生景観の基礎・植生景観調査方法・植生景観調査の野外実習とデータ解析
植生景観基礎コース
※様々な植生が作り出す「植生景観」を学び、自然環境と人間の営みの植生景観の創出のための最適な植生を導き出すスキルを養います。

Bコース
植生復元・モニタリングコース

講師:
東京農業大学 西野文貴先生
(有)バーズデザイン 小室武利先生
生態学的緑化方法、生態学的手法に基づいた植栽計画、
モニタリングと計画、植生復元工事の実習とデータ解析
※植生調査のデータから植生復元計画を立案するための工法、樹種や植栽数量の選定など実践的なスキルを習得します。また実際の試験植栽地でのモニタリングを行い、維持管理の方法も学びます。
植生復元・モニタリングコース
受講者の声
Aコース 中田さん(埼玉県)
 園芸品種を中心に植木の生産に携わっている中で、実際に自然の山の中に原種となる植物がどのように生育しているのかに興味がありました。植物の同定には自信がありませんでしたが、詳しい先生と一緒に山を歩いたことで植物の見方が少し分かった気がします。座学では組成表の表組みなど難しい部分も一人では出来ない体験ができて大変面白かったです。



Bコース 渡邊さん(東京都)
在来種緑化を進めるため、植生についての知識と技術を身につけようと受講しました。植生調査から景観を評価し緑化計画を立てて実行することは、知識と熟練が必要な専門技術で、それを身につけることでより自然を理解でき、自然をうまく使えるのだと実感しました。講座の内容を日常の業務で実践し、環境から植生が見えるほどに植生を使いこなす技術者を目指したいと思います。



Cコース 酒井さん(長野県)
公園等の設計業務において、地域の自然・生態系への配慮が求められる中で、現場での自然の捉え方や植生データの読み取り方、設計への活用などについて学びたく受講しました。専門知識が足りない上での受講は大変でしたが、座学から実習の一連の流れで学ぶことができたのは大変有意義でした。今後も様々な現場での研鑽を重ねつつ、自然のメカニズムや植物の潜在能力を上手く活用した緑化など、業務に活かしていきたいと考えております。

こんな目的の方に役立ちます!
・植生調査〜植生復元を一貫してできる技能を習得されたい方
・植生調査の方法を実践で学びたい方
・持続可能な森づくりのために、現地の環境に適した植栽計画を立てたい方
・保全・保護対象の植物について、周辺環境を含めた保護計画を立てたい方
・様々な植物の生冐適地をより深く理解されたい、設計・施工者のスキルアップに
・自然と調和した都市計画を立てる自治体担当者のスキルアップに

「植生管理士認定試験」について

 「植生管理士認定試験」は、植生復元の際に必要となる植生学などの基礎的知識や、植生調査・データ解析を実行する能力を有している技術者を「植生管理士」として認定する試験です。この認定試験は、その確かな内容が認められ、平成25年度に環境省・農林水産省の「人材認定等事業」に登録されています。
 一次試験(学科試験)と二次試験(実技試験)があり、植生アドバイサー成講座の全過程修了者は二次試験が免除されます。
 試験の詳細は、(ー社)日本植木協会のホームページを御覧下さい。

※ 受験資格
林業・農業・園芸・造園・環境科学系に関する大学に在籍ないし卒業した方、または、同様の実務を3年以上経験し、同等の技術と知識を有する方

※おもな試験内容 
学科試験:植生学、植生景観、植生復元管理技術、安全管理について
実技試験:植物の同定、植生調百、群落単位にもとづく解析について

テキストの紹介
植生景観とその管理
 テキストでは4人の先生方が植生の捉え方から調査、立案、それに対する工法を詳しく解説。また、それぞれの地域にある景観の調査、保全、創出の考え方から方法まで丁寧に解説しております

植生景観とその管理
東京農大出版会
ISBN978-4-88694-0 C3061
2,700円(本体. 2,500円)
かつての里山は景観的に美しく、生態学的に学ぶべきことがたくさんあるのです。
■(ー社)日本植木協会は、森づくりに必要な樹木の生産者の全国組織で、タネから何年もかけて植樹に耐える大きさの苗を育てています。人と自然の本当の共生を目指すため、森づくりや植樹を計画する際には、そこにある自然環境をきちんと調査して、その目的に適した樹種を選択してほしい、というのが私たちの願いです。そのための知識と技能を身につけ、適切なみどりの計画を策定・指導できる人材を育成するために、「植生アドバイザー育成事業」と「植生管理士認定試験」を実施しています。

一般社団法人植木協会公式サイト
http://www.ueki.or.jp

植生調査委員会公式フェイスブックベージ
https://www.facebook.com/we.love.vegetation/

【講師紹介】
Bコース担当
中村 幸人(なかむら ゆきと)


東京農業大学名誉教授(理学博士)。横浜国立大学助手、作新学院大学教授、東京農業大学地域環境科学部森林総合科学科教授。国際植生学会(IAVS)評議員、命名規約委員会委員、Phytocoenologia編集委員、神奈川県公共事業評価審査会委員、同県鳥獣総合対策協議会委員。
専門分野は植生学、景観生態学。
主な著書は「日本植生誌全10巻」(分担執筆)、「みどりの環境デザイン」(編著)、「植生景観とその管理」(執筆、監修)、「植生から見る里山」、「高山植物学」(分担執筆)、「Ecosystems of the World 6」(分担執筆)など。
世界各地の植生調査を行ない、日本の植生との比較研究や植物社会学の研究で多くの業績を残している。
Aコース担当
鈴木 伸一(すずき しんいち)


東京農業大学客員教授。(公財)IGES国際生態学センター長(学術博士)。宮脇昭教授に師事。
高等学校教諭、国際生態学センター主任研究員、東京農業大学短大/地域環境科学部地域創成科学科教授を経て現職。
経産省環境審査顧問、環境省植生図凡例検討委員、群馬県尾瀬保護専門委員。
専門分野は植物社会学。
主な著書は『日本植生誌第 3〜10巻』(分担執筆)、『環境緑地学入門』(編著)、『植生景観とその管理』(分担執筆)、『環境を守る森をしらべる』(共著)の他、植物相・植生分野の論文、報告書多数。
自然林構成種のポット幼苗の密植による環境保全林の育成にも従事。
Cコース担当
小室 武利(こむろ たけとし)


(有) バーズデザイン代表。
(特非)みどりのお医者さん理事、(一社)緑の音研究所理事。樹木医。
南九州大学園芸学部造園学科卒業。
横浜国立大学環境科学研究センター植生学研究室に従事。
専門分野は環境保全林計画、造園設計、樹木保全。
Cコース担当
西野 文貴(にしの ふみたか)


(株)グリーンエルム代表取締役社長。東京農業大学客員研究員。林学博士。
東京農業大学では中村幸人先生に師事し、生涯をかけて森づくりに邁進中。
父親が植物社会学による植生復元を根底に置いた苗木生産会社を設立し2023年10月に承継。
(公財) 鎮守の森のプロジェクト技術部会部会員。
日本緑化工学会よりシダ植物の増殖技術に関する研究等から研究奨励賞を授与。
神社本庁を始めとした様々な講演、自然観察会を実施。経済と生態系の循環を目指す「里山ZERO BASE」を展開中。